STORY
家の近くに薄暗いバーがあった。
ある夜、そのバーの前を通りかかると仕事を終えた従業員らしき女性が2人、
店から出てきて外階段を使って2階の部屋に入って行った。
1階で働いて2階に住んでいるらしい。
羨ましく見えた。
満員電車にも乗らず、出勤ギリギリまで寝ていられそうだ。
なにより、狭い世界にいれば傷つく心配もなさそうだ。
勇気を出して足を踏み入れてみると、女だらけの世界だった。
彼女たちは、凛としていてかっこよくて、
明るくて、温かくて、やっぱり羨ましかった。
仲良くなりたくて近づいた「つもり」だったけど、めちゃくちゃキレられた。
なんで伝わらないんだろう。
やがて、新しい人がやってきた。
その人はパンセクシャルと言った。
知らない言葉だった。
何度聞いてもわかるようでわからなかった。